宇宙人と暮らせば

面白親父、自閉症男子、理系(宇宙系)男子と私の、周りとちょっと違う日々を綴ります。

「喜びと不安の狭間 」次男、絶賛リハビリ中

5月16日

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 昼前に、東京に住む叔母と待ち合わせをした。

叔母は、亡くなった義母の妹に当たる。

一人だけではなかなか、ちゃんと食事もしてないでしょう? たまには気分転換もしなきゃね……と、 お昼をご馳走してくれて、病院にも見舞いに来てくれた。 

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叔母とレストランのある展望台で眺めた景色は、やっぱり大都会。田舎者の私は、眼を見張るばかり。

今までの中で一番、スカイツリーは近いところに見えた。


この場所からは、街がジオラマのようにも見えるけれど、ここにどれだけの人の暮らしがあるんだろう。


次男の大学も見える。屋上に並ぶ望遠鏡も見える。

交通費が勿体無いと、大学へのあの道を、ひたすら歩いて通学する次男の姿を思い浮かべた。f:id:hisakokk:20190517031123j:image

あちらこちらのビルが建て直されたり 、工事が入っている。

そういえば来年は、私にとっては2度目の東京オリンピックのある年。


この街で次男は勉強をして、バイトをして、頑張って暮らしているんだなと、感慨深く眺めた。 

そういう気持ちを持って街を見下ろす自分も、子供達に親にしてもらったんだなぁと、いつになく考えもしない事をグルグルと思ったりしていた。


叔母とのお喋りの時間はとても楽しく、とてもよい気分転換になった。 

そして叔母は次男の顔を見て、元気そうで良かったと、次男にエールを残して帰っていった。


叔母を見送って病室に戻ると、車椅子がないことに気づく。

看護師さんがやって来て、車椅子の撤収と、歩行器だけの移動に切り替えることを伝えられたとのこと。

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リハビリの後には、しばらく眠ったりもするけれど、目覚めたらこうして、教えてもらったリハビリを自らきちんとこなしている。


真面目な性格もあるけれど、やはり早く復活したいんだよね。

これは、硬くなった体を柔らかくするためのものらしい。


次男の好きなバンドのDVDを持ってきたので、それを見ながらのリハビリ。

気づけば、イヤホンも自分で装着できるようになっていた。


今日のリハビリで、お手玉でキャッチボールのようなことをしたと教えてくれた。

近距離で、下投げで相手に確実に投げて渡す。

すごく楽しかった! と、小さな子供みたいなことを笑いながら言った。


野球部でキャッチャーだった次男が、子供のボールのやり取りのようなことで、楽しいと笑いながら話す。

野球が本当に好きだから、少し前まで全く動かなかったはずの手で、確かに自分の力で受け取って投げ返せることが、きっと嬉しくてしょうがなかったんだと思う。


リハビリの時、裸足になって歩くことも多いらしい。

足の裏の感覚を取り戻すためだとか。それが、脳の刺激にもなる。 

小さい子供が裸足で遊ぶことは、脳の発達に良い影響を与えると昔からよく聞いていたけれども 、どうやら嘘ではないらしい。


 病院には1階と6階にラウンジがある。ドリンクバーのようなものもあって、無料で自由に飲むことができる。

のどが渇いたので、ラウンジでお茶しようと次男が誘ってくれた。


許可がでなければ、自分の病室の階以外への移動はできない。

でも、ラウンジやリハビリのマシンのある階なら、自由に移動していいと許可が出たらしい。 


そこで二人でのんびり話した。

寝たきりだった次男が、歩行器を使ってここまで歩いて、普通に椅子に座って話している。

やっとここまで来た、いや、もうここまで来れた……なのかな?


立つこと、歩くことを思い出して、それができるようになってきた。

でも、依然と取れない痺れと、戻らない床を踏みしめているという感覚が、やはり今の次男の、一番の精神的な敵になっている。


いつ戻るか分からないこの二つのものが、自分のところに帰ってこない限り、病気が完治したことにならない。


焦るなと声を掛けても、今日も感覚がない、今日もない……と過ごすのは辛いだろう。

それでも、焦るなと声を掛ける以外に術がない。


友達と話していた、夏の地学愛好会の合宿参加。

空が広く見える場所で、みんなと一緒に星を観測して過ごす合宿。 

叶えばいいなぁ。

そして、大好きな音楽のフェスもね。 f:id:hisakokk:20190517031119j:image

再び部屋に戻ると、やはり痺れの取れない手で、リハビリ用にもらった折り紙を折り始めた。


出来ることが増えていく喜びと、戻って来ない感覚への絶望にも似た思いと、その喜びと不安の狭間で頑張り続けている。


きっと、この病気を経験した人達はみんな、この壁を超えていったはず。

だから、君にもこれを超えていく時が、必ず来るはずだよ。