宇宙人と暮らせば

面白親父、自閉症男子、理系(宇宙系)男子と私の、周りとちょっと違う日々を綴ります。

今日、次男はアメリカに行く

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次男坊から「もうすぐ荷物詰め終わるよ」とLINEが来た。同時に、持参する日用品かれこれ、買い物の支出を表にして送って来た。

 

次男は大学二年生。大学受験で第一志望の大学だけ落ちた。「はやぶさが地球に帰って来る。それに関わりたいな」そう言って受けたが、希望は叶わなかった。

後期で受かった国立大学には、銀河系の権威の教授がいた。なのに、彼は私立の大学に行かせて欲しいと言って来た。

 

今の大学との縁は、地元の本屋から始まった。本屋の前で次男は二人の青年に「ここは地元で一番大きな本屋ですか?」と声を掛けられ「そうですよ」と答えたらしい。

普通だったらここで話しは終わるだろうが、何故かそこで三人世間話に発展したそうだ。

青年の一人は、地元帝国大学の大学院に通っていて、もう一人は関西の有名難関大学を卒業して就職をしたばかりと言ったらしい。

その時受験生だった息子に、受験する大学はどこかと聞いて、その全ての大学に知り合いがいるから何かあった時連絡して、と自分達の連絡先を渡してくれた。

 

それから次男は第一志望を落ち、後期に受かった国立大と、気になっていた私立大の二つの間で悩んでいた。受験した大学は、自分の夢のためにシラバスも進路も調べに調べ上げていたので、親としては懐具合から国立が助かるんだけど、それでも後悔だけはさせられないので、自分でどちらか選びなさいと言っておいた。

 

悩み抜いた次男は「私立大は地元会場で受けたから、実際大学を見に行かせて欲しい」と言って来た。旦那も私も少し驚きはしたけど、行ってくれば?と伝えると、早速、本屋で出会った青年達に連絡を取り、青年達の知り合いにも連絡を取って、次男は東京まで飛んだ。

一人大学に突撃すると、案内役を買って出てくれた学生と会い、その後は1人オープンキャンパス状態だったらしい。

突撃して来た受験生がいると噂を聞きつけて、教授達まで研究室から出て来たらしく、学びたいと思っていた宇宙物理学の教授も出て来て、大学をわざわざ案内してくれたそうだ。

研究室や望遠鏡、今後関わる宇宙探査機の話しまで、次男のために長い時間を割いて下さった。有り難い話しだ。

その後は案内してくれた学生に学食でおごってもらい、何時間も話し込んだらしい。

 

そうして、国立大学入学申請の前日、次男は私達親の前で頭を下げた。

「親不孝します。私立に行かせて下さい。銀河系ではなく、その外を研究したいです」

 

次男は最後は何でも自分で決める。だから本人は後には引けないし、引いたことがない。本当に頑固者だ。

それを知っているから反対はしなかった。通帳を覗くと、かなり泣けては来たけれど(笑)

 

 

小さい頃の次男は、よく女の子と間違えられていた。マクドナルドやファミレスで子供がもらえるおもちゃは、次男が小6位まではどの店員さんからも、迷いなく女の子用を差し出されていた。

でも、好きなものは恐竜で、見るテレビというとディスカバリーチャンネルヒストリーチャンネルがほぼメイン。どこか行きたい場所は?と聞くと、TDLとかUSJなんて思いも付かないようで「地層を見に行きたい」とキラキラの目で答えていた。おじいちゃんに貰った望遠鏡で空を眺めるのも好きだったな。

興味を持つものを並べてみれば、やっぱり男の子だなと思う。

しかも好きなことは、今の今でもブレていない。

 

そんな次男だが、生まれた時はすでに重度の自閉症の兄がいたわけで、案外苦労はしたとも思う。

そういえば次男がまだ3〜4才だった頃、玄関先で転んでしまって、鼻血を出して服を真っ赤に血に染めて大泣きしたことがある。その時、長男が脱走を図ってダッシュしたので、私は次男をそのまま置き去りに長男を追いかけ、10分後やっと捕まえて戻って来ると、次男はそのままバイオレンス状態で立ちすくんでいたっけ。

長男はいつも脱走していなくなる。夜寝る前にもよく脱走されて、私はやはり次男を置き去りにダッシュで家を出て追いかけた。

旦那は当時、仕事で毎日夜中も2時を過ぎないと帰って来れなかったので、次男は夜なのに一人置き去りにされ、一人で待っていてくれた。

外国なら、児童虐待で私は逮捕かも知れないな。でも、次男まで小脇に抱えて長男を追いかけるのは絶対ムリな話しだ。

毎日私が布団の中で絵本を2冊読んでいたので、次男は自分でパジャマに着替えて、いつものように絵本を2冊選んで、それを抱えたまま待ちながら眠ってしまっていた。

この光景は何度も何度もあった。この次男の本を抱えて眠っている光景だけは、毎回泣きそうになったし、今も切なく脳裏に残っている。

でもその時も、そして今の今までも次男は自分の兄のことを悪く言ったことがない。

いつか爆発するんじゃないかとずっと思って来たけど、ただの一度もそれがない。

ましてやいつも兄をかばって守ってくれた。

そんな次男が東京の大学に行く日、長男は空港で見送りながら、ゲートをくぐってどんどん離れて行く次男を不思議そうに眺めていた。そんな長男を展望台に連れて行き「あの飛行機に弟が乗っているよ」と言うと、黙って飛行機が飛び立っていくのを見つめていた。

 

それからというもの、長男は毎日次男がいつ帰って来るのか、カレンダーを指差して聞いて来るようになった。

長男はよく、次男にくっついたり膝枕で寝ていた。しばらくそれも出来なくなって淋しそうだった。たぶん、長男は今も次男の帰りを待っている。

 

そして今日、カレンダーを指さしながら「弟はアメリカに行くよ」と伝えた。

長男はどこまで理解出来るかは判らないが、カレンダーの上で指が止まって、私をじっと見て来た。

「勉強に行くんだよ。たった1ヶ月だよ。でも、今度会えるのはきっと、夏休みかなぁ」

そう言葉で伝えながら、私も旦那もしみじみとなってしまった。

 

次男は行く大学も、留学も、全部自分で決めた。やっぱり頑固だ。一度決めたら一直線だ。語学留学だけど、宇宙物理はトップクラスの大学だと本人が言っていた。

貫き通すことだけは誰にも負けなさそうだ。そういえば今までだって負けたことはなかった気がする。

ものごとを行う事に対してショートカットを好む旦那と、挫折は得意項目の私。次男は誰に似たんだろう。

そういえばずっと野球少年だったけど、キャッチャーであることを通したな。イップスにもなったけど、自分で治してしまったな。案外、やるんだよなぁ(笑)

 

「外貨両替、学生レートで行けたよ」と、またLINEが来た。これで準備完了らしい。

今日、成田を出発。見送りには行けないけどね。今しか出来ないことを、しっかり貫いて来い!