4月25日
東京へ。空港からそのまま病院に向かった。
そして、次男の姿を見て、愕然とする。
1日1日どんどん悪くなっていて、会った時は身体中の麻痺も進んでいた。
物も掴めない、立てない、歩けない、息も苦しい、飲み込みも辛い……。
筋力がとんでもなく落ちていて、殆どの動作が難しくなっていた。
神経の末端がダメになっているため、手を見ると指先が変形していて、伸ばすこともできない。
ずっと野球をやって来た次男が……。
身体能力も、学年でトップに入っていた次男が……。
突然にこんな姿になるものなのか。
でも現実。
受け入れて、治療に専念しなければならない。
ギランバレー症候群とは、風邪などのウイルス感染や食中毒(特に生の鶏肉)が原因となる。
次男は生の鶏肉のは食べておらず、ずっと風邪の症状が続いていて、風邪のウイルス感染によるものと思われた。
時々38度を超える時もあり、病院にも行ったけれど、風邪薬も全く効かないとは言っていた。
この症状は2週間を超えて現れていて、実はギランバレー症候群の最初の症状らしい。
人間は体にウイルスが侵入したら、それを察知した免疫細胞が敵を攻撃して生命を守る、という凄いシステムを誰もが持っている。
ギランバレーは、このシステムが過剰に働き過ぎて、いつの間にか敵以外に味方までも攻撃してしまう誤動作による疾患だそうだ。
その誤動作によって、免疫が末端神経を次々に攻撃して壊していってしまう。
だから、痺れから麻痺を起こして、遂には体が動かなくなってしまう。
次男はその2週間を経た後に、ついに痺れと麻痺が出現して、あのLINEにつながることになった。
でも一般的に、熱が続いて調子が悪い状態が2週間を超えたからといって、もしかしてギランバレー症候群か? なんて思うはずもない。
今年の風邪は長引くなぁ……くらいにしか思わない。
けれど、こんな時は要注意です!
この症状から突然に麻痺や痺れが来たら、この病気を疑うべきです。
毎年、10万人に1〜2人が発症すると言われていて、稀少な病気とはいえ、誰でも掛かってしまう可能性のある病気でもあるんです。
そして、本当に突然に、本当にあっという間に、恐怖を感じるほどのスピードで体が動かなくなって、感覚すらなくなり、痛点だけが残る……こんな病気があるなんて知らなかった。
でも、誰でも知っておくべきだと思うんです。
ギランバレーの治療のための薬剤。
これを、ガンガン入れられていて、これからこの薬が次男を助けるんだ……としか、この日は分からなかった。
担当医とは明日会えそうだということで、夜は一旦、治療期間に私の寝ぐらとなる次男のマンションに向かった。
4月26日
医療チームは医師3人、リハビリチームは理学療法士、作業療法士、言語療法士の3人、全員で6人の固定メンバーで、それは最後まで変わらない。
その他にも看護師さんを含めて、親切、ていねい、説明もきちんとしてくれる。
そして医師の説明があった。
自己免疫が過剰に反応して、末梢神経を攻撃して壊し続ける。
4週間がピークで、それまでは悪化の一途を辿るが、その後は落ち着いてくる。
怖いのは呼吸不全と血栓によって肺脈を塞いでしまうこと。
この日から血中酸素を測る機械を入れ、呼吸の管理をして、血中酸素が不足したら呼吸器を入れる事を承諾して欲しいと言われる。
血栓については、予防のため医療用ストッキングを着用。
この時点で、私も東京に長期滞在と覚悟した。
仕事も長期休みをもらい、長男の関係にも現状を伝えて、サポート体制を各所にお願いした。
そして直ぐに対応してくれている。
長男のサポーター達は、やはりすごいね。
有り難いね。
病院のスタッフは、色んな雑談なども入れながら、次男のメンタル面もサポートしてくれている模様。
これまた有り難い。
食事はまるで離乳食。
そういえば、食道も筋肉だったよね。
嚥下がうまくいかないから仕方ない。
でも、次男が病院食なのに「美味しい」と言う。
お医者さん達も、ここのは美味しいと言ってたらしい。
そのことは、入院中のメンタルにはすごく良い影響を与えそう。
それにしても病室はとんでもなく狭い。
今まで我が家の誰が入院した部屋より狭い。
4人部屋でありながらも、でも1日7千円。
さすが東京。
田舎なら、この値段は個室のVIP部屋だな。
病室は10階で、窓からの景色はとてもいい。
ただ、次男のスペースは廊下側で、動けない彼にその景色を見ることが出来ない。
それに、東京に来てからというもの、ずっと天気が悪い。
窓から見えるスカイツリーのてっぺんは、雲で隠れていた。