宇宙人と暮らせば

面白親父、自閉症男子、理系男子と私の、周りとちょっと違う日々を綴ります。

たぶん、サギに遭っていると思われた話し

これはまだ、次男が急性期病院に入院していた時のお話。

 

いつものように理学療法士さんが病室にリハビリにやってきて、次男の足を持ち上げた瞬間に一言。

 

「あれ?底が上がったんじゃない?」

 

さすがプロ! 

最悪の状況を抜けたことを瞬時に正確に判断されて、その後すぐに検査、医師からも、これからは回復に向かうと告げられました。

 

それからは早かった。

若いし、やっと少し無理してもよくなったから、回復期病院にて本格的にリハビリしましょうと。

 

次男が入院している間、1日も欠かさず病院に通いました。毎日毎日、何をするわけでもなく、何ができるわけでもなく、それでも通い続ける以外、することがありませんでした。

 

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病院の10階から眺める景色は


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病院を出る頃はすっかりこんな風。


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大学が多いこの地区の地下鉄は、サラリーマンより学生たちの利用が多いので、遅い時間に地下に潜ると、誰もいないなんてこともありました。


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稀に、長い長い地下鉄のエスカレーターにも、誰も乗っていないなんてこともありました。

 

そうやって私が通った急性期の病院から、次男は離れることになったのですが、どちらかというとバタバタと決まったので、それから退院の準備に追われることになりました。


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退院まであと3日という日、支払いについて病院に聞くと、とりあえず治療費の見込み金額を明日、渡しますとのこと。

 

翌日病室に行くと、次男が蒼白な顔で1枚のメモを渡してきました。見るとその金額が書かれていて、覚悟はしていましたが、やはりすごい数字が書かれていました。

 

でも、高度医療であるし、部屋代が田舎ではありえない金額。納得せざる得ない金額と次男の申し訳ないの台詞に、命を助けてもらう治療に必要だったお金だから、これくらいは行くでしょ!と答えました。いや、実際そうも思いました。

 

ギランバレー症候群は近年になって、希少な病気でありながら臨床例がたくさん集まったことで、治療法が確立されて治る人が多くなった病気です。

 だから難病指定から外れて、特定疾患という扱いになったので、治療費の補助はなくなったそうです。つまり、全額負担ということです。保険を使っても、高額医療費を使っても、いろんな制度を駆使しても、やっぱり笑いしか出ないほどの高額であることには違いありません。

 

考えようによっては、治療が確立される前の、治療費補助が受けられた時代よりも、補助がなくても治る確率は高く、死亡率が下がった今の時代の方がずっといい!と思うわけです。

 

それに、病院には本当に良くしてもらったので当然のことです。

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というわけでその翌日、退院は明日......という日を迎えて、お金をかき集めて一旦郵便局に集約、それから見込み金額分を下ろしに行きました。

前日に看護師さんに聞いたら、明日あたり用意して頂けてたらいいと思います......と言われたので、そりゃぁ慌てて用意しちゃうわけです。

 

正直、カードが使えるはずだ、大きな大学病院だから、絶対使えるはずだ......と思いつつ、前日に「カード使えますか?」と聞くのを忘れてしまったので

「おしっ!確実な現金払いで行くぞっ!!」

と、妙なテンションになってしまっていました。

 

郵便局に行くと、申し込みの紙に引き出し金額を記入して、窓口に出ました。すると、郵便局員さんは少し慌てた様子で、窓口の中でも一番端っこの方に私を呼びました。

 

局員さん「あの、何に使われます?」

私「病院代です。息子が入院してまして......」

局員さん「え?あの、どこの病院ですか?」

私「日本医科大です」

局員さん「失礼ですが、あの......すごい大金ですが、大変な病気だったんですか?」

私「はい、ギランバレー症候群です。退院なので、とりあえず支払いを病院でしてきます」

局員さん「あぁ、病院に......そうだったんですか。大変でしたね。少々お待ちください」

 

郵便局員さんは、現金を用意して私の目の前で袋に入れてくれました。そしてそれを私に手渡すと

 

局員さん「ひったくりとか結構ありますから、バックに入れてしっかり持って下さいね」

私「はい!わかりました」

局員さん「大金ですから、しっかり持って下さいね」

私「はい!わかりました」

局員さん「いや、本当にひったくり、多いんですよ。気をつけて下さいね」

私「はい!わかりました」

 

余程頼りなく見えたのでしょうか……。

多分、このくだりを5回くらいしたと思います。


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その時は、私自身も大金を下ろしているという、心なしかの緊張もあったかもしれなくて、この会話について特別なことを思うところは何もなく、親切な郵便局員さんとしか思わなかったのですが......

 

今時、治療費の、しかも高額医療費を現金で支払う人など、都会にはいないのかもしれません。それをわざわざ郵便局に下ろしに来たわけです。

正直、おばあちゃんには少し早いのですが、中年も通り越したくらいの年齢でもあります。

 

多分、サギにあってるんじゃないかと心配されたんだと......。だいぶ後になって気づきました......鈍っ。

 

息子の代理人が家に取りに来るとか、どこかで待ち合わせて誰かに渡すとかではなく、病院に直接と聞いて安心されたのでしょう。

 

それにしても、優しい郵便局員さんでした。退院ということは治ったんですね、と言われたので、転院しますと答えたら、大変ですね、親子で頑張って下さいね!と励まされました。

 

郵便局員さん、ほんの数分の間に、あれもこれもと心配してくださって、ありがとうございました!


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そしてその後、しっかりバックを持って、すご〜く周りに気をつけて、ちょっと緊張しながら病院に到着。支払いについて聞くと、退院当日(つまりさらに翌日)の正午くらいにお願いします!と言われた私。

え?じゃ、カード払いできますか?って今日聞けたじゃん!えぇ〜〜〜〜っっっ!

 

ということで、すごすごと大金をお持ち帰りした私。

翌日の転院の日。

しっかりバックを持って、すご〜く周りに気をつけて、ちょっと緊張しながら再びお金を持って行きました。

そしてバタバタと転院準備をして、お世話になったスタッフさんたちに挨拶を済ませ、次男が最後の昼食中にようやく、お支払いとあいなりました。

 

支払いは窓口でと思っていましたが、結構人がいたので、ここでなぜか訳の分からないチャレンジ精神が顔を出しました。

「人生初、病院で自動支払機!」

はい、田舎者ですから、それがどんなものか知りませんでした。

 

支払機の前に立つと、機械の案内に従って入力して「現金をお入れ下さい」と機械なのに流暢に言われて、ここでまた緊張してしまいました。

 

どこ? どこに入れるの??

と探すと、受け皿のようなものが。

「入れる」......じゃなくて「置く」じゃん!

と、これまた緊張時の謎の突っ込み思考が駆け巡る中、その皿に札束を乗せてみました。

 

すると分厚い札束が、たった3回の「カシャッ、カシャッ、カシャッ」という機械音とともに、あっという間に吸い込まれていき、それを私は唖然として見つめてしまいました。

 

と同時に、その横の細い穴から、診療明細が出るわ出るわ......私が慌ててアワアワとそれを落とさないように両手で受け止めていると、視界の片隅に見えたおじさんが、その紙の量を見て唖然と立ち尽くしていました。

 

今思い出しても、面白い光景だったろうなと、客観的に見たい現場だったなと思えるのは、今が完全に余裕のある状態になったからなのでしょうね。

 

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治療費の、二日間に渡る私のてんやわんやな支払い劇。

今となっては、なんであんなことしたんだろうとか、もっと効率よく動けばよかったのにとか、転院の決まり方が急だったから仕方なかったのかなとか、いろんなことを思い出したり反省したり。

 

次男のマンションと病院を、ただひたすら行ったり来たりするだけの日々でしたが、それでもいろんなドラマはあったんだと。

 

今にしてみれば、そう思うのであります......。

 


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