宇宙人と暮らせば

面白親父、自閉症男子、理系(宇宙系)男子と私の、周りとちょっと違う日々を綴ります。

お彼岸と感謝と大どんでん返し

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雨の春分の日のお彼岸。

今年の春分の日は週末にやってきました。

いつもなら長男の要請で週末ドライブとなるわけだけど、どうせならお墓参りに行こうではないか!

 

というわけで、行ってきました。

雨の中を。

 

我が家のお墓に続く道と階段は、桜の花びらが、なんとも燻し銀な風情をも華やかにしていました。

 

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さて、週末ドライブは、最近では毎回3時間ほどの定例イベントとなっています。

旦那の田舎のお墓も車の往復でそんなもんだから、いつもの週末と変わらない。

 

このご時世、世間をうろちょろするのはあまり感心してもらえないので、お参りだけして折り返すことに。

というわけで「目的がある」ということだけが、いつもの当てもないドライブと違っていて、時間的にはいつもと変わらないイベントとなりました。

 

そんなドライブで目的地に向かう途中、ラジオで「ラジオスターの悲劇」が流れてきました。

旦那が「これ、生で聴いたよね!」「そうそう!何年前だっけ?!」

 

数えてみると13年前。

旦那と二人で行ったコンサートで聴いた曲。

 

長男が生まれて、二人でコンサートなんかに行けるなんて思ってもいなかった。

本当に嬉しかったことを、昨日のことのように覚えています。

 

私は高校生の頃から「エイジア」というアメリカのロックバンドが大好き。

旦那も私も洋楽好きでプログレ好き。

私は聴くだけの人だけど、旦那に至っては、実はCDメジャーデビューを果たす程に音楽人。しかも好きなバンドの演奏は完コピ多数。

 

その13年前に「エイジア」が地元にやってきたのです。

私も40歳をとうに超えてしまっていて、旦那も50が目の前。

来日する彼らも完璧なおじいちゃんたち。

 

もう来日は最後じゃないかと言われていて(とか言いながらその後も来てたりする。地元には来なかったけどね)行きたいよ〜!でも、長男がいるからいけないよぉぉぉぉぉ(泣)と漏らしておりました。

 

すると「それは是非、ご夫婦で行ってもらいましょう!!」と、動いてくれた人達がいたんです。

 

当時、採算ド外視で障害を持った子たちを預かってくれていた人達がいました。

一軒家を借りて、困った時に子供を預かる、行政サービスの隙間を埋めてくれていた人達。

大元は長男の通う今の施設が運営していたのだけれど、行政から外れた支援には当然補助金などもらえず、多くの親たちを助けてきたその家は、結局は持ち堪えられず消える運命となりました。

 

でも、そこで支援をしてきた人達は各地で今も活躍していて、スーパー支援員に成長した人達もたくさんいます。

 

あの日、私たち夫婦に、既に諦めてしまっていた時間をプレゼントしてくれた人達。

おじいちゃんたちの演奏と、どう見てもいい歳のおじさんおばさんが、若かった頃に戻って毎曲スタンディングオベーションでのりまくった時間。

 

「ラジオスターの悲劇」はバグルスの曲だけど、メンバーが「エイジア」と被っているので、当然なんの違和感もなく聴いてしまうわけだけど・・・。

 

雨の中を走る車の中のラジオの音が、あの時の嬉しさと、楽しさと、そして感謝を思い出させたのでした。


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今回のお墓参りには、ご先祖様に二つの報告をする目的もありました。

傘をさすのも少し前までは上手くできなかった長男。

随分と上手に持てるようになりました。

多くの人達が手を掛かけてくださっていることで、できることが増えてきています。

 

そして、長男と関わってくれている人達が、長男のことを本当に考えて、長男のために関わってくださっていることを、さらに深く知るようなことがありました。

 

それを聞いた旦那も、ありがたくて嬉しくて、目が潤んでいました。

 

そして、大学院の先の進路について話した次男にも

「お兄ちゃんを支えてくれている人達がたくさんいるね。心配しなくていいよ」

と言うと、次男も電話の向こうで泣いていました。

 

人は人でしか支えられない。

そういつも教えてくれる人達。

どんな未来でも、絶望だけは絶対に来ない!

そう思わせてくれる人達に、長男は囲まれています。


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白い空と桜。桜はやっぱり、青い空が似合うなぁ。

 

そしてもう一つの報告。

 

三日前の夜に次男から電話がありました。

かなり疲れていて、多分一人になりたくなかったのか、気分転換したかったのか・・・。

 

学会発表を二日後に控えて、論文について何度も教授からダメ出しをされて、書き直してはNG、さらに書き直してはNGを繰り返している。

 

書き方については当然、教えてもらえるわけないので、ついに本番二日前になってしまったと。

 

本人曰く、望遠鏡を覗くのも、解析をするのも楽しくてしょうがない。

何時間だって大丈夫。

けれど、論文がね・・・。

 

あれ?

何時間だって大丈夫?

 

長男は回るものが大好き。解体作業を見るのが大好き。

何時間だっていける。

旦那は旧道が大好き。地図が大好き。

何時間だっていける。

 

何時間もいけるものを持っていない私は、この家の中では唯一ではないかい?

 

まぁ、そんな我が家の次男だから、ひたすら解析して、誰もまだ知らないことを見つけてしまったもんだから、論文が難しくなるのは当然なわけです。

 

解明されていること、結果が分かっていることを書くのではないので、苦労の連続で、睡眠時間も削って食事も取らないような状態だった様子。

親としては、もうそんなんどうでもいいわ、はよ寝ろ!ちゃんと食え!!と言いたいところをグッとこらえて話を聞きました。

 

とても厳しい研究室らしく、辞める子も出るほどだけど、次男は教授のことを

「間違ったことはひとつも言われていない、愛情があることは分かってるから、答えられない、不甲斐ない自分がいて・・・」

と言っていました。

 

論文がどうとか、私にはわからない。けれど、何度も何度も諦めないでやり続ける君はすごいよ!正直、なかなかできないことだよ!

と言うのが精一杯でした。

でも、それも本心。

 

次男は最後に、あと少ししか時間ないけど、最後まで頑張るよ!

と言って電話を切りました。

 

そして本番が終わった二日後の夕方。次男から電話がかかってきました。

次男は本当に最後まで諦めず、当日の朝まで準備して、今年はリモート開催だったので、自分の部屋からではなく大学へ行き、敢えてその教授の隣を陣取って学会に挑み、発表したそうです。

 

私だったら、とてもそれは出来ない。教授の隣なんか座れない。

何が降りてきて、開き直れたのか??笑

 

けれど教授は最後まで次男に付き合って聞いてくれて

「良かった!初めての学会発表とは思えなかった」

と言ってくださったとのこと。

 

論文については、錚々たる大学や国立天文台などの教授達から質問が飛び交い、全てに答えられたと。

コメントも驚くほどの数が来て、多くの人が興味を示してくれたと。

天文学のトップの人達からは、資料や文献なども教えてもらい、激励されたようでした。

 

大どんでん返し!!

 

でもやはり、教授から認めてもらったのは何より嬉しかったんじゃないかな。

それにしてもあの、三日前の悲壮すぎる次男は何だったのか。

 

残された時間を諦めずに突っ走ると、何かが起きるものなんだな。

 

見事に教えられました。

これが経験できただけで、次男はもうひとつ強くなれるんじゃないかな・・・。

 

ちなみにこんな状態だから、修士1年の次男は就活はできていないんじゃないかと思っていたら、実はやっていたことが判明。

 

宇宙の解析に関わる仕事ができるところなんて、日本には2つくらいしかないそうな。

どちらも私でも聞いたことのある名前だったけど、その中のひとつが最終選考に残っているらしい。

そして、もうひとつもエントリーするとも言っていました。

 

正直、どちらも受かるのは至難の技らしく、結果どうであれ、こんな次男だから絶対に何かで宇宙に関わろうとするだろうな。

 

それに、子供達に宇宙の面白さを伝える仕事もしたいと言っていました。

某科学館に問い合わせをしたら、どうやら令和4年度卒業の選考は来年とかで、やたら遅い時期にあるらしく、でもいただけた回答には

「来年度卒の募集が始まりましたら、こちらから連絡させていただきます」

というものだったらしい。

 

宇宙の仕事なんてそうそうないし、就けるものでもないよ。

夢みたいな話だよ。

 

そう言った人がいた。

でも、次男はまた諦めないだろう。

 

私の父が次男に贈った望遠鏡が喜んでるよ。

そして、お父さんのご先祖様達もね。


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二つの報告を終えたあと、花びらの階段を降り、再び車に乗ったら、いつものように最後はセブンイレブンでドライブのシメとなるデザートを買って帰路につきました。

 

今日は今日で雨の風情。

明日は晴れそうだよ。