宇宙人と暮らせば

面白親父、自閉症男子、理系(宇宙系)男子と私の、周りとちょっと違う日々を綴ります。

老いと壊れゆく身体に「将来」と言える時間が短いことを教えられる

「50代でしょ?なんでこんなに手が痛んでるのかなぁ・・・」

「それはですね・・・」

私は、先生にその理由を話したのでした・・・。

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私の右手の親指の付け根は、何年も掛けて、もうすでに何度もステロイドを入れています。

痛くなったからすぐに病院に行ける、なんてことは、なかなか難しい。

特に長男が養護学校に行っていた時代は、幼稚園バスより早く帰るので、病院に行く時間など捻出できる訳もない。

 

これは重度障害者の親の「あるある」で、たとえ高熱が出ても、子供がいると何が起こるかわからないので、ゆっくり寝ての養生はまず諦めます。

最終手段は旦那に仕事から帰ってきてもらうしかないけれど、そのカードはなるべく使わないようにしていたので、あまり褒められないけれど、ど根性みたいな「我慢」という癖みたいなものが身についてしまっていました。

 

自分が体調を崩してしまい、子供を学校に送る事もできなくなった時、ヘルパーさんを使って送迎ができればいいのだけれど、ヘルパーさんへの依頼は、家から出発して必ず家が終点でなければならず、家から出発して学校が終点は許されていないのです。

 

こういうルールは「助ける」ことよりも「不正に使う可能性」の方を重く考えて作られているので、確かに理由を誤魔化して面倒な送迎をしてもらうなんて使い方の人もいるのかもしれないけれど、そんなひと握りの人を想定してルールを縛っていることで、本当にピンチの時に「なんで使えないんだーーー!」と叫びたくなります。

 

まぁ、ルールはルールです。もちろん、守っています。

だから、病院に行くとして学校の迎えの時間に間に合わなかったらいけないと、受診を諦めたり、もし通院となると、もっとややこしくなるからと行かないという選択になります。

 

こうして「根性」の上に「根性」は積み重なっていくわけで。

 

卒業しての現在、通所している事業所は訳を話せば、急なお願いでも預かってもらえます。

今は日中一時というサービスも利用できるので、学校時代よりは随分楽です。

何より、困ったときは必ず言ってほしい!と声をかけてもらえることで、心が軽くなるのです。

 

息子ももう30歳。

そんなこんなで、私の体も息子と共に頑張ってくれています。

ただ「ガタが来る」というのは、こういうことなんだと、ここ最近は痛感しています。

 

数年前から膝が痛く、遂にヒアルロン酸を注射する治療に踏み切りました。

ただ、なかなか長男のいない時間での予約時間がうまく取れなくて、遂に挫折しました。

その後、まぁ何とか普通に歩けるので「よし」としています。

 

ただ、やはり走るのは厳しくなりました。

足の速い長男を、昔のように急スタートダッシュの全速力で追いかけるのは、さすがにもうできません。

 

その後、両手に痛みがあって、それも誤魔化しながら過ごしていました。
でも、どうしても我慢できなくなって物もつかみ辛くなると、ステロイド注射で痛み止めを繰り返していました。

 

そして今回も遂に物がつかめなくなって、物を手から落としてしまうなんてことがしょっ中になってしまいました。

それまでは右手に注射をお願いしていましたが、今回は左手。

 

今回受診した病院の先生は、私の両手のレントゲンを見てこう言いました。

「50代でしょ?なんでこんなに手が痛んでるのかなぁ・・・」

 

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私は先生に話しました。

 

車の通りの多い道路で寝転んで動かない長男を、力ずくで剥がして連れて帰り、玄関からリビングに入った途端に私の体は弛緩を起こして全く動けなくなってしまったこと。

 

パニックを起こして物を壊しまくり、床に尖った破片が散らばったとき、私はその破片を踏みながら、長男が踏んで怪我しないように、そして長男の手を握りしめて「わかったから、もうおしまいだよ!」と叫んでいたこと。

 

先生は驚いて「そうだったの・・・」とひと言おっしゃいました。

 

本当は、私の手はこうして長男の命を守ってきたと思っています。

人は長男の行動を「他害」と呼ぶけれど、本当は「訴え」の行動であること。
体全体で、解ってほしいと全力でぶつかってくる長男を、この手は全力で受け止めていました。

 

今になって、頑張った体は悲鳴を上げ始めています。

けれど、全力で受け止めたのは長男の問題行動だけではないのです。

 

言葉を持たない長男の、辛さも、悲しみも、わかってほしいという想いも。

私の50代と思えないほど痛んでしまった手も、長男の想いを知っています。


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私の体は、長男の想いを受け止めたまま、老いと共に壊れていくのでしょう。
それはもう、仕方のないことと思っています。

ただ、長男のために使える時間がとても短くなっていることを、身をもって知らされています。

 

長男の将来のためにこうしたい、という想いがあっても、私の将来がもう短いのです。

だからこそ、急がなければならない。

 

そしてこれからは我慢を減らし、日々を健康に過ごしながら、限られた自分の将来を精一杯使っていけたら……。

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骨もひどく変形していて、もう両手のCM関節炎は治してあげられないけれど、腱鞘炎は治せるから、しっかり治療しましょうね。

 

そう先生が優しく言ってくださいました。

今回は色々諦めることなく、ちゃんと治そうと思います。

 

長男との将来が、少しでも長くなるように。

そう願いながら。